記憶のスィッチ

 少し前はキンモクセイの香りがあちらこちらで匂っていましたね。この時期は日暮れが早く、見慣れたいつもの通りに灯りがともるのも早くなりました。そうなると、中でも私にとっては動物病院の看板が一層目を引くことになります。以前はそれがとても頼もしいシンボルに思えていました。しかし、今はその前を通り過ぎると、あわてて自宅へ帰り病院へ駆けつけていた事を思い出してしまいます。そして「もう急いで帰る必要もないのだな」と、ふと寂しい気持ちになってしまうのです。

 また、つい先日は買い物のために久しぶりに途中下車をしたのですが、そこは早くも華やかなクリスマスムードが漂っていました。週末の夕方とあって、沢山の人が楽し気に行きかう中をかき分けるように目的地に向かっている途中で「私はこんな時間に何故ここにいる事ができるのだろう」と、とても悲しい気持ちがこみ上げてきてしまいました。
 病気の猫のお世話があったので暗い時間に街中を歩く事自体が数年ぶりだったからです。人ごみに居るのがかえって辛くもあり「久しぶりに寄り道でもするか」という気持ちがすっかり失せ、用事を済ませて一刻も早く帰りたいという気持ちになったのでした。

 こんな具合に、何かがきっかけとなって無意識のうちに頭の中で連想ゲームが始まっている事があります。例えばそれは、匂いや風景、肌で感じる季節の温度だったり聞こえてきた音楽がスィッチとなって一瞬にして記憶が鮮明に蘇るのです。中でも匂い(嗅覚)は唯一、五感の中で記憶と感情を司る大脳へ直接働きかけるため感情と結びつきやすいと言われています。そういえば、子供の頃に嗅いだ匂いの記憶で一気にタイムスリップしてしまう事ってありますよね!?

 芳香療法といわれるアロマテラピーに効果があると言われているのはそのせいです。好きな香りをかぐことで嗅覚から大脳へと働きかけ、気持ちがリラックスする事ができます。こんな日は入浴剤を入れてゆっくりお風呂に入るのも良いですね。喪失などの強烈な体験は簡単には上書きできるものではありません。しかし、楽しかった想い出も間違いなく沢山あったのです。悲しいスィッチだけでなく、楽しいスィッチがきっと見つかるはずですよね!!

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