家庭内野良猫カツオの話③ ― 捕獲の苦悩

 カツオが便秘を繰り返すようになったころ、我が家では当時18才になる猫(めるも)が、慢性胆管炎の治療のため自宅で皮下輸液をし、毎週のように通院していました。
 経験上、飼い主ですら触れない猫は診察を断られることが多いので躊躇していましたが、ある日、めるもが通院している病院のドクターにカツオの相談をすることにしました。「触れない猫なのですが、やはり治療には鎮静剤を使用しますか?」と、今までの経緯を説明しました。「鎮静剤もリスクが無いわけじゃないので、まずは連れてきてさえもらえれば使わずにできるかもしれません」とのこと。

 カツオは数日前から便秘で嘔吐を繰り返し、もはや食欲もありません。なんとか捕獲して連れて行かねば!
 キャットタワーの箱に逃げ込まれたら捕まえる術がないため、捕獲決行前日から箱にさりげなく?クッションを詰めて入れないよう封印し、高いところにも荷物を置いて登れないように工夫しました。 そして、いよいよペットキャリーと毛布を持って猫部屋に。もはや私もカツオも緊張でドキドキが止まりません。

 今までぐったりしていたのが嘘のように、カッと目を見開いて私の一挙手一投足を注視しています。こちらが少しでも動こうものなら、「ウォ~ン」と低い唸り声を発して鋭い目つきに。もう目が合っただけで「フーッ、カッカッ」と猫特有の威嚇が始まります。めげずに何度も上から毛布をかぶせましたが素早く脱出される始末。そんな状態で既に4時間が経過しています。
 荒っぽい事は避けたいと思っていましたが、こうなったら仕方があるまい!と、こっちも覚悟を決め、心を鬼にして(きっと顔も・・・)強硬手段に出ました。キャットタワーに追い込み、箱に逃げ込もうと登り始めたところ、まんまとクッションが邪魔して戸惑っているカツオを後ろからガバッっと・・・。
(もはや私自身の怪我も覚悟の上でしたが、危ないので真似しないでくださいね)

「カツオを捕まえました!」と、電話をしていざ病院へ。それにしても、一体どうやって診察するのだろうか・・と不安でしたが、持参した洗濯ネットをキャリーの扉側にスタンバイして、傾けたキャリーから無事にネットでキャッチ!
そもそもカツオは攻撃的というより虐待による人間恐怖症なので、捕まってしまえば
緊張から身体を固くして石のように動かなくなってしまうことも判明。
 可愛そうではあるが、おかげでその間に触診やら採血が無事に完了し、検査の結果は腎臓の数値が要治療レベルでひどい脱水症状を起こしていること。どうやら便秘はそのせいだという事が判りました。

 せっかく捕まえたので通院が無理なら入院点滴しましょう、ということでカツオ初の入院となりました。点滴で脱水を補って摘便することに。ちなみに浣腸や下剤は更なる脱水を引き起こすので腎臓病には避けなければいけないそうです。もちろん、診察に鎮静剤なんて必要ありませんでしたし、男性ドクターの指でも摘便可能でした。確か骨盤が狭くて摘便は無理といわれていたのに。。「一体、前回の病院はなんだったのだ!?」と、衝撃の瞬間でした。

 さて、さすがに入院も3日目ともなると “メデューサの石の魔法” もすっかり解けて、病院でも元気に威嚇が始まります。それが「じゃぁ、そろそろおうちに帰ろうか」という目安にもなりました。通常なら定期的に皮下輸液開始・・といったところですが、カツオの性格上それは現実的ではありません。
 相談の結果、また症状が出たら(すなわち弱っている)→入院点滴というパターンになりました。そしてこの2年の間、そのサイクルは次第に3カ月毎、それがやがて月1になっていくのでした。 ーつづく

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