家庭内野良猫カツオの話④ ― もう入院はやめよう

 悲しいかな、一度壊れた腎臓はもう元には戻りません。カツオの入院が月1ペースになって半年が経った今年の6月、主治医と相談しました。ここのところ静脈点滴でも腎臓の数値は高値で下げ止まってしまい、以前ほど劇的な改善が見込めなくなっていること。それは、静脈点滴を止める、つまり退院することで数値が悪化するというレベルに来てしまっているということに他ならないのです。しかし、このまま大半の時間を点滴の管でつないで病院で過ごすというのは本末転倒です。

 主役はカツオで、そもそもカツオにとっての幸せとは何か!? 安心安全な自分のテリトリーである自宅で、唯一心を開いている大好きな「タマ」と一緒に暮らす事が一番なはず。もちろん、そのためには痛みや気持ち悪さなどの不快感を取り除くことで「食べる」「ストレスなく眠る」など、生きる上での基本的な生活の質を保つことが大切。
 今、私にできる事は何だろう?その結果、今後は極力入院は避け、週1回の皮下輸液通院を週2回に増やすという目標を立てました。「なんだ、そんな事?」と、思うかもしれませんが、家庭内野良のカツオを相手に週2回もの捕獲をする行為はなかなか高いハードルなのです。

 しかし、その頃には当初4キロあった体重も半分になり、筋力が落ちたせいで以前ほど逃げる勢いも無くなっていました。予定通り週2のペースで皮下輸液と便秘のチェック、時々の摘便のための通院がはじまりました。カツオは家に帰ると決まって病院ハイで、いつも以上にバリバリと爪を研いだり走り回ったりと興奮気味です。その姿はまるで「あんなことやこんなことしやがって~」というカツオからの抗議にも見え、まだそんな元気があるんだな!と、ホッとしたものです。

 一方、頻繁に見知らぬニオイを纏って帰ってくるカツオを警戒気味のタマは、すり寄ってくるカツオから逃げるようにタワーの上に駆け上がります。そんな事にお構いなしのカツオはタマの後を追ってピッタリと隣に寄り添い、長い尻尾を絡ませては執拗に甘えています。まるで仔猫が母猫に甘えるかのように。
 以前なら、間違いなく入院を視野に入れる数値ではありますが、2匹並んでご飯を待つ姿や、量は減りましたがタマと並んで嬉しそうに食べる様子をみていると、これで良かったんだと思えるようになりました。

 しかし、そんな状況も長くは続きませんでした。脱水が進んでいる事で7月に入ってからの通院頻度は、週2日から中2日ペースに上がります。更に、私が毎日つけている体調チェックシートの<食欲>という項目には「△」や「Ⅹ」マークが増えています。
 捕獲も以前のような修羅場とはならなくなりました。ブランケット越しにも随分と痩せこけた感触で、フワリと持ち上がる軽さが実に頼りなく、とうとう体重も2キロを切り始めています。それでも捕獲時には、弱々しくもシャーシャーと威嚇して抵抗するそぶりにカツオのプライドを感じて、切なくなります。 ーつづく

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