集団の心理と個人の本音

 先月、 付き合いで新年会に出席しました。メンバーは40代の男女で仕事も家庭もそれなりに充実しているといった、一見大人の方たちです。全く共通点が見いだせない彼らですが、お酒を飲みながらという事ならフランクにお話ができるかなと少しは期待していました。
 10名程度の参加者の中に動物好きな方がいて、飼っている犬の話などをしていました。ようやく興味が持てる話題になったなと耳を傾けていたのですが、周囲はどうやら動物に縁がない・・・というか興味がない方々の様です。

 やがて、その犬を飼っているという男性が、以前家族が可愛がっていたインコが亡くなった時の話を始めました。娘と奥さんがとても可愛がっていて、亡くなった時には火葬して手のひらほどの小さな骨壺に収めたという話でした。そのとたん、周囲の動物に興味の無さそうな面々が大笑いしたのです。「えー?インコの火葬」「いくらかかったの?」「そんなに高いんだー」「あはは、犬や猫だったらいったいいくらよー」「庭に埋めるでいいんじゃないの?」と言った調子です。思わず『ここは昭和かっ!?』と、ツッコミを入れたくなるような会話でした。

 私が驚いたのは、その男性が周囲の笑いに応えるように面白おかしく話していた事です。本心かどうかはわかりません。或いは、理解されないと判断してその場の雰囲気を壊さぬように会話を盛り上げただけなのかもしれません。しかし、その光景をみて私は『これじゃぁ、ペットロスなど到底世間に理解されないわけだ…』と実感しました。
 後日、その中にいた方とお話しをしたのですが、実は猫好きで実家では沢山の猫を飼っていたとおっしゃっていた事にも驚きました。なぜならあの時「庭に埋めるんじゃないのー?」といって盛り上げていた一人だったからです。

 社会心理学には「リスキーシフト」という言葉があります。これは、普段は穏健な考えや節度を守って行動することができる人が、集団の中では極端な言動や危険な行動を行ったり、また明らかに正しくないとわかっていても周囲に同調したりすることを言います。いじめなども同じ心理が働いていると言えます。このように、個の存在というものは集団に影響されやすいものなのですね。

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