持ち続けている絆

 ただいま春のお彼岸真っ只中ですね。きっと愛おしいワンちゃんや猫ちゃんたちの為にお墓参りに行かれる方もいらっしゃる事でしょう。実は、我が家では歴代の旅立った猫たちの遺骨はいずれも納骨せずに家に置いています。もちろん宗教観や死生観などは人それぞれですが、いわゆる手元供養や自宅供養と呼ばれ、人の場合でも最近増えているようですよ。

 生前と同様、3匹仲良く並んだ遺骨の前には、毎日ご飯やお水、お花をお供えして手を合わせて話しかけたり写真を眺めたりしています。実は、この行為は子供の頃からご先祖のお墓や仏壇に手を合わせる習慣を持つ日本人にとって、とても受け入れやすく、心の安定にもつながる行為だと言われています。私自身、こちらが望めばいつでも交流できる身近な存在として、亡くなった子たちとの関係を無意識に再構築していたのだと感じています。

 ところで、お彼岸にお墓参りをする習慣は日本だけです。更に言うと、仏教国の中でも仏壇という文化は日本独自のものなのだそうです。このことから、昔から日本人は故人を身近に感じて亡くなっても尚、絆を大切に持ち続けてきたのだと言えます。

 そして、これまでは「亡くなった対象との分離」が悲嘆からの回復の目標とされてきました。肉体は消えてなくなり、もう二度と触れることも話すこともできない故人と、文字通り肉体的にも精神的にもお別れをすることで、やがてポジティブな気持ちを取り戻し、新しい人生に向かって進んでいこうという考えです。
 しかし、人間の心や感情はそう単純ではありません。そして何より、実は故人との絆や繋がりを持ち続けることは悪いことではないのです。むしろ、生きている時とは違った形の繋がりを持って、自分の中に彼らの新しい居場所を作り、新たな関係性を続けていくことが心の平穏につながるのだと私自身も実感しているところです。

 その関係性はまた変化があるもかもしれませんが、そのたびに再配置をしてこれからも関わり続けていくのだと思っています。私が望めばいつでも傍にいる変わらぬ身近な存在として。このように、どうにもならない哀しみは、無くす努力をするのではなく、折り合いをつけて付き合っていく事なのかもしれないですね。

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